病気と死を恐れない激しく燃え上がる色情も、もし病気になったらと考えたとたん、たちまち冷え切ってしまう。名誉や利益の甘美な味わいも、いちど死に思い至ると、とたんに蝋を噛むような味気無さと変わる。常に死を意識にとどめ病気のときを忘れなければ、かりそめの俗事に惑わされることなく、求道の心を持続させることができよう。「新釈菜根譚」(守屋 洋)184頁